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カドカワ Research Memo(8):書籍・アニメ・ゲーム・教育事業を重点分野に成長基盤の構築を進める(1)  6月07日15時58分

■中期経営方針

2. 重点施策
KADOKAWA<9468>は中期経営目標を達成するため、以下の6点を重点施策として取り組んでいく方針だ。

(1) 新規IP点数の拡大
ECや電子書籍市場の拡大により、出版事業は開発・販売双方でDXを進めることで、新たな成長軌道に入ったと考えており、新規IP点数について、年間約5,000点から約6,000点規模にまで拡大していくことを目指す。拡大施策としては、編集人材の増員(約500名から約600名体制に)に加えて、Webでの新人発掘を強化する。具体的には、小説投稿サイトとして成長中の「カクヨム」や「魔法のiらんど」で新人作家を発掘し、無料コミックサイト「コミックウォーカー」で新作の認知を拡大するなどデジタルマーケティング施策を推進していく。ここ最近は、「カクヨム」等の小説投稿サイトから書籍化だけでなく、TVアニメ化する作品も出てきており、今後もこうした好循環を作りあげながら、IP点数の拡大を図っていく。また、新ジャンルの拡大にも注力していく方針で、新漫画誌「青騎士」※など新たなコミックレーベルの創刊や、縦スクロール漫画の開発、動画配信を利用した作品開発などに注力する。

※2021年4月創刊。同社のヒット作家が集結した新しい作品と出会える隔月発行の総合漫画雑誌。

(2) DXの加速
「攻めのDX」としては、書店受発注システムのデジタル化(専用発注端末の導入)と需要に即応した出荷の推進による返品率改善や、オンラインとオフラインの融合によるマーケティング施策、SNSデータを活用した作品開発によるヒット率向上などに取り組んでいく。

専用発注端末については、2015年以降、導入店舗における返品率の改善が着実に進んでおり(2015年36.5%→2020年27.8%)、今後も導入店舗を増やしていくことで、さらなる販売効率の向上を目指す。またSNSデータの活用では、著者発掘から企画立案、宣伝告知、ヒット分析などの編集者のノウハウをシステム化し、データをもとに逐次改善を図りながら進めている。2021年3月期において、生活・実用書分野の書籍新刊売上が前期比35%増と好調に推移したのも、こうした取り組みの成果と見ることができ、今後もさらなるヒット率向上を目指していく。

一方「守りのDX」としては、情報インフラを整備してリモートワーク率の向上に取り組んできた。情報セキュリティ体制の強化だけでなく、テレワークでも社内で円滑なコミュニケーションが行えるようにするため、グループ24社にビジネス向けオンラインチャットツールを導入した。現在、同社のリモートワーク率は約70%となっており、今後もリモートワークを推進していく考えだ。

(3) 電子書籍のグローバル展開
世界的な成長市場であるWeb漫画分野への投資を強化し、グローバル展開を推進していく。具体的には、縦スクロール漫画の制作・多言語化、販売、プラットフォーム開発への投資を行い、「BOOK☆WALKER」を5年後に世界有数の縦スクロール漫画書店に育成していくことを目指している。また、AI技術を活用した漫画の翻訳や自動コマ分割の実現についても、東京大学と共同研究を行っている。

また、世界的に日本のアニメの認知が広がりライトノベル市場が成長するなかで、ライトノベル等のテキストコンテンツの世界展開を加速していく。このため2021年4月に日本のライトノベル作品を中心に、英語出版事業をサブスクリプションサービスで展開する北米の出版社、J-Novel Club LLC(以下、JNC)を子会社化した。JNCは日本での新刊出版に遅れることなく、先行でチャプター配信を行ったのち、順次、電子書籍を英語圏市場における主要なオンラインストアを通じて販売するビジネスモデルを展開している。今後JNCと連携することで、英語圏向け電子書籍ストア「BOOK☆WALKER Global」での電子書籍販売を拡大していくほか、米子会社のYen Press LLCで翻訳出版を行っていく。ライトノベルの販売が海外でも拡大することで、IPのコミックス化、あるいはアニメ化といったメディアミックス戦略も進むことが考えられ、海外売上高の成長加速が期待される。なお、「BOOK☆WALKER Global」の売上高は、2021年3月期で数億円程度とまだ小さく、今後の成長余地は大きい。

(4) アニメ事業の強化
アニメ事業では、新作アニメを年間40本制作(前期実績は33本)できる体制づくりとライセンス収益の拡大、ゲーム化やゲームコラボを含めたアニメIPのゲームロイヤリティ収益の拡大に取り組んでいく。

アニメ制作本数については既に世界でも最大規模となっているが、今後は制作能力を拡大していく方針だ。また、世界トップクラスのクリエイターを集めた、グローバルで通用する3DCG制作スタジオの設立も検討している。ライセンス収益の拡大に関しては、新作及びヒット作を含む取扱い作品数の増加とともに、今後も拡大していく見通しだ。アニメIPからのゲームロイヤリティ収益に関しても、2021年3月期は前期比65%増と高成長を実現しており、メディアミックス戦略による収益拡大が順調に進んでいることがうかがえる。

なお、同社は2021年2月にサイバーエージェント<4751>、ソニーグループ<6758>との取り組みを強化するため、両社に対して第三者割り当てによる株式発行を実施し、約100億円を調達した。サイバーエージェントとは従来からも幅広い事業で協業・取引関係があったが、さらなる関係強化に向けての資本提携となる。今後は、サイバーエージェントが有するスマートフォン向けゲームの開発・運用力と、同社のコンテンツ力を組み合わることで、グローバル・メディアミックス戦略をより強力に推進していくための協議を進めていくことになっている。

また、ソニーグループとも長期的な関係強化を目的として資本提携を行った。今後、ソニーグループが有するアニメ及びコンシューマーゲームのグローバル展開力と、同社のコンテンツ力を組み合わせることで、グローバル・メディアミックス戦略をより強力に推進していくための協議を進めていくことになっている。

調達資金のうち、50億円は新規IPの創出・開発・取得に、残り50億円は既存IP活用の最大化に向けた事業資金として活用する予定にしている(支出予定時期は2023年3月まで)。既存IP活用の最大化とは、アニメ・ゲーム領域を中心とするIPのマルチメディア展開やグローバル展開(英語圏・中国語圏等)による収益最大化を指す。

(5) ゲーム事業の大型タイトル投入
フロム・ソフトウェアで開発を進めているアクションRPG「ELDEN RING」について、時期は未定ながらも投入する予定となっている。

(6) 教育事業でEdTechのリーディングカンパニーを目指す
生徒数が順調に増加している「N高等学校」や2021年4月に新設した「S高等学校」、クリエイティブ分野における即戦力人材育成に特化した教育を展開するバンタンなどで、ICTを活用した教育を推進していくことで、EdTechのリーディングカンパニーを目指していく。

「N高等学校」「S高等学校」では、ドワンゴが独自開発した双方向型教育学習サービス、VRによる体験学習サービスを提供するなど、遠隔型教育サービスのなかでも先進的な取り組みを進めている。コロナ禍でニューノーマルな社会様式が求められるなか、時代のニーズにマッチする「N高等学校」「S高等学校」の生徒数は今後も増加基調が続くものと予想される。またVRによる体験学習の効果が確認されれば、コンテンツを含めてシステムを外販して収益を拡大していく可能性も十分に考えられ、今後の動向が注目される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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