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デジタル社会に不可欠なリセット:今後の日本人及び日本に望まれるもの(1)【実業之日本フォーラム】 10月28日13時00分

【ゲスト】
須賀千鶴(前・世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター長)
2003年に経済産業省に入省。2016年より「経産省次官・若手プロジェクト」に参画し、150万DLを記録した「不安な個人、立ちすくむ国家」を発表。2017年より商務・サービスグループ政策企画委員として、提言にあわせて新設された部局にて教育改革等に携わる。2018年7月より、デジタル時代のイノベーションと法、社会のあり方を検討し、グローバルなルールメイキングに貢献するため、世界経済フォーラム、経済産業省、アジア・パシフィック・イニシアティブによるJV組織の初代センター長に就任。国際機関のネットワークを活用しながら、データガバナンス、ヘルスケア、スマートシティ、モビリティ、アジャイルガバナンスなど多様な国際プロジェクトを率いる。2021年7月より経済産業省 商務情報政策局 情報経済課長。

【聞き手】
白井一成(株式会社実業之日本社社主、社会福祉法人善光会創設者、事業家・投資家)


白井:いままでのお話を伺い、スマートシティの知見をいち早く学び、自分たちの文化に合った形で仕組みづくりをおこない、素早く実践に移さないと、国際的なデジタル社会のリセットには取り残されてしまうということがよく理解できました。今後の日本人及び日本に不足しているものは何だと考えておられるでしょうか。

須賀:日本人として、もう少し頑張ってもらいたい、頑張らなければならないと思うのは、試行錯誤を恐れてはいけないという点です。発展途上での段階で試行錯誤をしていることそのものが大事です。世界もうまくいったことを自慢してもらうことを期待しているわけではありません。「こうやってみたけどダメだった」、「ここで落とし穴に気づかなかった」というようなことを含めて、その知的貢献というものを大いに多とする人たちがイノベーションの先端にいます。その人たちが、一番先端でルール作りをしているのです。日本にはそこに入るようなメンタリティを持つ人が非常に少なく、どうしても、そのグループに入ることができません。とりあえず、アーリーアダプターがやっているのを眺めて、失敗したところは、「ああいうところで失敗する」というふうにメモって、なるべく失敗しないように後からついていくという行動をしてしまうのです。

そうすると、時代が進み、イノベーションが同時多発的に大量に起こり、ものすごい規模でリセットが起きているときに、一番面白い先頭集団にいることはできません。

私たちの第四次産業革命センターは、各国のセンターの中で2番目に設立されました。

スピードにこだわって急いで設立した背景には、常に、生煮えかもしれない、あるいは甘いかもしれないが、アイディアのイノベーション、知的なイノベーションが起きているところに身を置いておこう、首をそこへ出していこうと考えたものです。日頃のセンターの運営も、そのことを念頭に置いています。

白井:いま、須賀さんが指摘された日本人の感覚、失敗を恐れるという感覚が問題であるということは、多くの人も同じように指摘されています。答えにくいかもしれませんが、須賀さんはどのあたりに原因があると考えていますか。

須賀:私は、他国センターの人たちと話をし、立ち居振る舞いをみて思ったことが二つあります。その一つは、日本人はアンビギュイテイ・マネージメントが苦手な人が多いということです。アンビギュイティというのは不確実性ですので、足元が定まらないような状態で、不安になり過ぎない、失敗するかもしれないがそこに立ってみようというようなメンタリティというか、そのような状態でも精神的に不安定になり過ぎないという力が欠けているように思います。

私たちのセンターには、各企業だとか役所から非常に優秀な若い人達がフェローとして来ていただいています。来ていただいているフェローさん達は、周りから、あのセンターは、何をやろうとしているのか、あまり方針が明確ではないが大丈夫なのかと言われるそうです。このアンビギュイティ、周りも不安、その不安が自分に投げかけられてくるという状況をマネージできるようになりましょう、これがイノベーションの近道ですということを、ずっとフェローさんとも認識を共有するようにしていました。

それから、日本人の特徴のもう一つは、アンビギュイティと並んで多様性を持つ集団のマネージメントが苦手であるということです。日本は同じような環境にいた人たちの集団のマネージメントしかできない人が多いので、女性を含めて、人とは違う、同じロジックや阿吽の呼吸では動いてくれない人のマネージメントがすごく苦手ではないかと思います。私たちのセンターでは、意識して、留学生ですとか、外国人ですとか、そういう人をチームに入れています。そのような人たちとのコミュニケーションをつうじて、グループをマネージメントする能力をつけていかないと、イノベーションの最先端領域にはいられないと思っています。

白井:日本人が、須賀さんが言われるような、不確実性と多様性を受け入れることができるようにするためには、どのような方法があると思われますか。

須賀:言葉にすると、とても陳腐になってしまいますが、「不確実性も、多様性も当たり前」という感覚を持つことでしょうか。やってみると相当難しいと思います。

たとえば、「オープンイノベーション」という言葉があります。「オープンイノベーションをやりましょうと」言われて、これに反対する人はほとんどいません。でも、この「オープンイノベーション」というのは相当面倒くさい作業です。自分たちの組織であれば「あれをやっておいて」で通じるものが、世の中がこうなっていて、私たちはこうこうこういうふうにする人だから、こういうときにこういうふうにやってほしい、それを私たちは「あれ」と呼んでいるというふうに、いちいち定義して説明していかなければなりません。それを少しでも間違えたり、誤解が生じていたりすると全く違う方向に行ってしまいます。このように、自分の組織の中のロジックが通じない相手とコラボレーションして成果を出していこうとすると、自分でやったほうが早いというふうに誰もが思います。

そのときに、でも、なぜ私たちはマルチステイクホルダーのコラボレーションをやりましょう、それが正解ですというふうに自信を持って申し上げているかというと、クオリティにちゃんとこだわると、自分たちで全部内製化できるものなどデジタル時代には一つもないということなんです。このことを虚心坦懐に受け入れないと、縮小均衡するばかりで、自分たちだけにしか通用しない製品を作り上げ、結果として国際市場で負けてしまうということです。

従って、オープンイノベーションのスキルを、日本の組織が組織として持つ、それは楽でもなければ楽しいことでもない、苦行であるということを覚悟し、やろうとすることが必要かなと思います。

「デジタル社会に不可欠なリセット:今後の日本人及び日本に望まれるもの(2)【実業之日本フォーラム】」へ続く

(本文敬称略)


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